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球磨川流域の新たな治水対策 ~ 緑の流域治水で命と清流を守る ~
緑の流域治水を推進します
昨年7月、球磨川流域を中心に記録的な大雨が降り続き、球磨川をはじめとする河川の氾濫や土砂崩れが発生し、多くの尊い命が失われました。私は、決して取り戻すことができない命の重さを痛感し、二度とこのような被害を起こしてはならないと固く決意しました。その決意のもと、国及び流域市町村と豪雨災害の検証を行うとともに、30回にわたり、住民の皆様に治水の方向性や復旧・復興に向けた思いを伺ってまいりました。
そして、「命と清流をともに守る」ことこそが全ての流域住民の皆様の心からの願いであると受け止め、その願いに応える唯一の答えが、自然環境との共生を図りながら、流域全体の総合力で安全・安心を実現する「緑の流域治水」であると確信しました。
その上で、識者の意見を踏まえ、住民の生命・財産を守り安全・安心の確実性を担保するためには、ダムを選択肢から排除することはできないと判断しました。さらにダムを貯留型ではなく流水型にすることで、地域の宝である清流への影響を最小化することができると考えました。そうした考えから、現行の貯留型の川辺川ダム計画を完全に廃止した上で、住民の命を守り地域の宝である清流をも守る新たな流水型ダムを国に求めました。
今後、新たな流水型ダムを含めた“緑の流域治水”という新たな治水の方向性のもと、国や県、流域市町村、住民の皆様等の力を結集し、球磨川流域の「命と清流を守る」プロジェクトを全力で推進してまいります。
そして、「命と清流をともに守る」ことこそが全ての流域住民の皆様の心からの願いであると受け止め、その願いに応える唯一の答えが、自然環境との共生を図りながら、流域全体の総合力で安全・安心を実現する「緑の流域治水」であると確信しました。
その上で、識者の意見を踏まえ、住民の生命・財産を守り安全・安心の確実性を担保するためには、ダムを選択肢から排除することはできないと判断しました。さらにダムを貯留型ではなく流水型にすることで、地域の宝である清流への影響を最小化することができると考えました。そうした考えから、現行の貯留型の川辺川ダム計画を完全に廃止した上で、住民の命を守り地域の宝である清流をも守る新たな流水型ダムを国に求めました。
今後、新たな流水型ダムを含めた“緑の流域治水”という新たな治水の方向性のもと、国や県、流域市町村、住民の皆様等の力を結集し、球磨川流域の「命と清流を守る」プロジェクトを全力で推進してまいります。
熊本県知事 蒲島郁夫
人吉市街地の被災状況=写真提供:人吉市
流出した鎌瀬橋(八代市坂本町)=提供:国土交通省九州地方整備局
※プロジェクトの詳細をご覧になりたい方はこちら
“新たな流水型ダム”で守る
■ダムの基本的な働きとは?
ダムは、洪水時に上流域から流れ込む洪水の一部をため、下流の河川が安全に流すことができる水量をダムから放流することで、下流域の氾濫を軽減する働きがあります。
市房ダム(水上村)では、令和2年7月豪雨時に多良木町で約90cm、人吉市で約40cmの水位低減効果があったと推定しています。
また、洪水を一時ためることで、下流域の住民が安全に避難できるための時間を確保する働きも持っています。
市房ダム(水上村)では、令和2年7月豪雨時に多良木町で約90cm、人吉市で約40cmの水位低減効果があったと推定しています。
また、洪水を一時ためることで、下流域の住民が安全に避難できるための時間を確保する働きも持っています。
■流水型ダムとは?
流水型ダムは、洪水調節専用で、ダムの底部に水を流すための穴が空いており、洪水時のみ水をため、平常時は水をためないのが特徴です。
そのため、平常時は通常の川が流れている状態であり、ダムの上下流の連続性が保たれるため、水や土砂、生物の移動が可能となり、自然に近い環境に近づけることができます。
そのため、平常時は通常の川が流れている状態であり、ダムの上下流の連続性が保たれるため、水や土砂、生物の移動が可能となり、自然に近い環境に近づけることができます。
■流水型ダム等による水位低減効果は?
本年1月に策定した球磨川水系緊急治水対策プロジェクトで計画されている新たな流水型ダムや市房ダムの再開発、また河道掘削や遊水地などの対策を全て実施することで、球磨川沿いの人吉市街部では、令和2年7月洪水が堤防から越水せず、浸水が解消すると推定されます。
人吉市地点の水位は、約250cm低下(推計値)
市房ダムの有効活用
市房ダム(水上村)は、洪水調節を主な目的とし、発電やかんがいも行う多目的ダムです。令和2年7月豪雨では、約1,200万立方メートルの洪水をダムに貯留し、また、約2万立方メートルの流木を捕捉するなど、下流域への被害を軽減しました。
現在、市房ダムの洪水調節機能を更に高めるため、洪水調節容量の増加や洪水調節操作ルールの変更などについて検討しています。
現在、市房ダムの洪水調節機能を更に高めるため、洪水調節容量の増加や洪水調節操作ルールの変更などについて検討しています。
捕捉した流木の状況
■豪雨前の放流により異常洪水時防災操作を回避
ダムは、上流域からの流入量より放流量を少なくして洪水を調節しています。
しかし、大雨により、ダムが満水になると予測される場合には、放流量を流入量に近づけていく操作を行う必要があります。この操作を「異常洪水時防災操作」、一般には緊急放流とも呼ばれていますが、この操作を行った場合でも、流入量より多くの水を下流に放流することはありません。
市房ダムでは、令和2年7月豪雨時は、ダムの水位を下げるため事前に放流を行い、普段より多くの洪水調節容量を確保していたことで、異常洪水時防災操作を回避しました。
しかし、大雨により、ダムが満水になると予測される場合には、放流量を流入量に近づけていく操作を行う必要があります。この操作を「異常洪水時防災操作」、一般には緊急放流とも呼ばれていますが、この操作を行った場合でも、流入量より多くの水を下流に放流することはありません。
市房ダムでは、令和2年7月豪雨時は、ダムの水位を下げるため事前に放流を行い、普段より多くの洪水調節容量を確保していたことで、異常洪水時防災操作を回避しました。
●市房ダムはこれまで、昭和46年8月台風、昭和57年7月豪雨、平成7年7月豪雨で「異常洪水時防災操作」を実施しています。なお、昭和40年7月や昨年の7月豪雨では、この操作は行っていません。
※市房ダムの役割と異常洪水時防災操作についての動画がご覧になれます。
※市房ダムの役割と異常洪水時防災操作についての動画がご覧になれます。
ダムで捕捉した流木の一部は、地域の皆様に配布し、薪やいす、オブジェなどに利用していただいています。
“山”の再生・強化
山を治めるため、植林や間伐により森林の保全を図るほか、渓流の浸食を軽減する谷止工(たにどめこう)、崩壊した山の斜面を復旧する山腹工(さんぷくこう)などを実施します。また、砂防堰堤(えんてい)や流木止めなどを整備し、土砂災害から人家などを守ります。
多様で健全な森林づくり(球磨村)
北目川砂防堰堤(水上村)
“田んぼ”でためる
排水桝(ます)に田んぼダム用の「せき板」を設置し、水田に雨水をためることで、河川への流れ込みを抑える「田んぼダム」を推進しています。球磨川上流域では、最大3,300ヘクタールの水田で取り組めると想定され、その場合は約500万立方メートルの貯留効果が期待できます。
田んぼダムを実施している排水の様子=写真提供:新潟市
堆積土砂の“撤去”・河道“掘削”
出水期に備え、洪水により河道(かどう=河川の水が流れる部分)にたまった土砂(球磨川とその支川で合計約169万立方メートル)の撤去を進めています。また、洪水時の水位を低下させるため、河道を掘って河川の治水安全度の向上を図ります。
川辺川(相良村)
●球磨川同様、昨年の7月豪雨により洪水被害をもたらした芦北町の佐敷川水系(佐敷川、宮の浦川、田川川)においても、堤防整備や河道掘削などを実施し、河川の治水安全度の向上を目指します。
“逃げ遅れゼロ”の実現へ
「想定最大規模降雨(L2)の浸水想定区域図」に対応したハザードマップや、個人の避難行動を記した「マイタイムライン」作成のほか、大雨時でも確実に情報が届く戸別受信機設置や、支援が必要な方への個別(避難)計画策定などに取り組みます。
※自宅をはじめ各地点の危険度情報や避難所の所在地などの避難に関する情報を入手されたい方はこちら。
防災情報くまもとホームページ<外部リンク>
※上記の対策の他、球磨川とその支川での対策として、堤防整備、宅地かさ上げ、遊水地の整備なども併せて実施します。