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「気になる!くまもと」Vol.1006

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0124418 更新日:2022年2月3日更新

​小さな声に耳をすませる、地域の受け皿。
「子ども食堂」から「地域食堂」へ。

子ども食堂の写真

子ども食堂の定食の写真

コロナ禍で孤食や困窮が加速する中、全国的な広がりを見せているのが「子ども食堂」だ。統計を見ると、2018年の時点で全国に約2300カ所あった子ども食堂は、2021年には約6000カ所へと、約160%増えたことがわかっている(※)。その背景には、子どもの貧困や食品ロスに向き合う当初の役割だけでなく、地域のつながりを再び見出し、さまざまな社会問題に向き合う「地域食堂」としての役割が加わっていることがうかがえた。

※NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」調査

子ども食堂で食事をする様子の写真

世代を超えたスタッフの
思いやりと機転が場を作っていく

​​街の中心部からほど近い商業施設「グランパレッタ」内にある「はぐくみ地域・子ども食堂大江」は、毎週水曜日と土曜日の午後5時に暖簾(のれん)を上げる。取材に訪れたのは、開店前の午後4時。厨房に向かって会釈をすると、仕込みを終えたばかりのボランティアスタッフの方々が柔らかな笑顔で応えてくれた。

はぐくみ地域・子ども食堂大江の外観の写真

子どもに限らず、誰でも気軽に利用可能。
オープンまでの15時〜17時の時間帯は、学習・交流の場として解放されている。

​​ 「はぐくみ地域・子ども食堂大江」の利用は、基本的に子どもは0円。大人は300円。食材の多くは寄付で賄っているため、その日の献立は、食材の状況を見て決める。基本的には、届いた食材に足りない食材を買い足し、ボランティアスタッフが知恵を絞る。スタッフのシフトや献立はない。この場に集う人の思いやりと機転が、場を作っていくのだ。料金は、店内で配布されるメッセージカードとともに寄付金箱に入れるスタイル。ボランティアスタッフは中学生〜80代までと幅広い。

はぐくみ子ども・地域食堂大江のキッチンの写真

はぐくみ地域・子ども食堂のスタッフの写真

この日の献立は「餃子の王将」さんからの寄付による特別メニュー。「餃子の王将弁当」をメインに、手作りのお味噌汁や里芋や季節の野菜を使った副菜、果物を添えて提供。

「利用者さんからの言葉などに励まされて、私たちの活動は続いています」とほほ笑むのは、代表の野村順子(のむらじゅんこ)さんだ。保育士や防災士などいくつもの肩書きを持つ野村さんは、高校生の頃から福祉施設のボランティアに携わってきた経歴を持つ。
2006年に自身の子育て経験を元に、地域の課題を地域の母親たちと解決するNPO法人を立ち上げた。2016年2月2日に帯山地区に「はぐくみ地域・子ども食堂帯山」をオープン。家庭的保育室やデイサービスなどの福祉事業を展開しながら、子ども食堂の立ち上げを試みる方への情報提供や支援も積極的に行なってきた。「私自身、子育てをする中で、地域活動の拠点として、みんなで楽しく食を囲みながら集える子ども食堂の大きな可能性を感じて活動を続けてきました」。

「株式会社はぐくみ」「一般社団法人あゆみ」代表の野村順子さんの写真

「株式会社はぐくみ」「一般社団法人あゆみ」代表の野村順子さん。家庭的保育室や放課後デイサービスをはじめ、子どもの福祉や障害がい児・者などの社会福祉の幅広い事業を展開している。

献立の写真

野菜の写真

食材の大部分は青果業や個人の農家さん等からの支援をいただいている。​

一人ひとりの声に耳を傾け、
必要な“手当て”を届け続ける

2021年8月。コロナ禍にもかかわらず「はぐくみ地域・子ども食堂大江」をオープンしたきっかけは、「はぐくみ地域・子ども食堂帯山」を訪れる利用者の声を聴いて、新たな拠点の必要性を感じたから。「街中に近く、アクセスが良い場所(大江)なら、さまざまな拠点として機能できるし、これまでよりも多くの方にお預かりしている品などを含め支援を届けられるかもしれないと思いました」と野村さん。「熊本駅方面から帯山までお野菜を取りに来られる方、コロナ禍でお子さんの学費の支払いに困っている親御さん、生きづらさを感じている方、来なければ安否確認が必要な方まで、さまざまな方がいらっしゃいます。ここを頼りにしてくださるお一人おひとりの声にできるだけ耳を傾け、その都度目の前の方にとって必要な手当ては何かを考えてきました。
何が正解なのかは誰もわからないコロナ禍ですが、最大限の予防対策を取った上で、新たな拠点を設けようと踏み切ったんです」。

子ども食堂の利用者からのメッセージの写真

以前からボランティアを続けているという高校生スタッフが講師となり、子どもたちと制作した花のコサージュ。1枚1枚大切に保管している利用者からのメッセージは、「はぐくみ地域・子ども食堂大江」に関わる人々にとってかけがえのない宝ものだ。

地域の絆と世代間交流の場として
地域に優しさのバトンをつなぐ

現在、はぐくみ地域・子ども食堂(大江・帯山)は、野村さんが代表を務める「子どもから地域へ拡がれネットワーク」に加盟する約60団体の物流管理拠点である傍ら、常設のフードパントリー(食品を無料で提供する支援活動)もあり、利用者にとっても、支援者にとっても、アクセスしやすい街の拠点として重要な役割を担っている。今後はフードロス解消のルート開拓や、新たな支援のきっかけとなるステーションとしての役割も担っていく。
「地域・子ども食堂という場所で、日常の中に少しでもホッとする瞬間を届けられたら」。コロナ禍で、行き場のない気持ちを抱えて生きる方々に、安心感を与えられる居場所として、地域における子ども食堂の役割は大きい。 「以前に比べてこの1年間で多くの方の善意や食材、寄付金をお預りすることが多くなってきました。しかし熊本県内にある沢山の子ども食堂まで多様な支援が行き届くまでにはいたっていません。まだまだ何もかも足りない状況です。可能でしたら、身近な方へご支援やお声掛けをいただけたら嬉しいです。また地域の子ども食堂にも行って頂き、地域の方にこんな居場所があるよとご紹介いただけると各食堂のスタッフの皆さんの励みにもなると思います。」
少子高齢化や過疎化とともに単身世帯が増加する中で、地域の世代間交流を促し、地域のつながりを再確認する場として、今後もその重要性は増す一方だろう。
午後5時。開店から瞬く間に満席となった食堂は、一気に家族連れの和やかなムードで満たされる。日常というかけがえのない時間が紡がれるこの場所で、「はぐくみ地域・子ども食堂大江・帯山」は今日も優しさのバトンをつないでいる。

配膳の写真

【Data】
「はぐくみ地域・子ども食堂大江」

所 熊本市中央区大江4−2−65 グランパレッタ熊本1F
Tel   096−384−8181(代表)
営 水曜、土曜の17時00分〜19時00分

「はぐくみ地域・子ども食堂帯山」

所 熊本市中央区帯山3-20-14 はぐくみキッチン
Tel   096−384−8181(代表)
営 土曜の11時30分〜13時00分