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公害紛争の解決手段について
公害紛争の解決
1.公害で困った時は?
公害に関わる紛争が発生した場合に、当事者が取れる手段としては次の方法があります。
(公害で困った場合のフローチャート(PDFファイル:56KB)もご覧ください。)
公害苦情相談
各市町村又は熊本県の各保健所公害苦情相談窓口に相談する。
公害問題でお困りの方の身近にあって、気軽に利用できる相談窓口で解決を目指します。
公害苦情相談を受けた相談員等は、被害者、加害者それぞれからお話をお伺いし、現場の状況を確認して事実を十分に把握します。
そのうえで、加害者に公害防止の対策を指導するなどして、紛争の解決に努めます。
公害紛争処理
熊本県公害審査会に調停、あっせん、仲裁の申請をする。
当事者が多数であったり、被害が広範囲に及ぶような紛争や、公害相談窓口に苦情を申し立てたが、相当の期間が経過しても解決の見込みが立たない等、第三者の仲介があれば話し合いが進展すると思われる場合などに、専門の機関による紛争の解決を目指します。
司法的解決による救済
裁判所に訴えに提起等をする。
公害問題でお困りの際は、まず公害苦情相談窓口をご利用ください。
2.熊本県公害審査会とは
熊本県では、公害紛争処理法第13条及び熊本県公害紛争処理条例に基づき、典型7公害に係る紛争についての調停・あっせん・仲裁を行うため、弁護士及び学識経験者等から構成される熊本県公害審査会を設置しています。
設置根拠法令
設置時期
昭和46年10月
委員
9名(弁護士3名、学識経験者等6名)
熊本県公害審査会委員名簿(R5.1月~) (PDFファイル:265KB)
3.公害とは
事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる典型7公害によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいいます。
- 「相当範囲にわたる」とは、人的、地域的に広がりがある、という趣旨です。
(調停、あっせん、仲裁の申請は、一人でもできます。) - 「典型7公害」とは、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下、悪臭をいいます。
4.熊本県公害審査会が扱う紛争とは
公害に係る被害について生じた民事上の紛争です。
- 民事上の紛争とは、一般には私法が規律する私人間の法律関係に関する紛争のことで、ここでは公害をめぐる私人間の法律問題に係る紛争を指しています。
公害に関する紛争であっても、行政庁が公害に関して行った行政処分を争うような民事上の紛争と言えないもの(行政事件と言われるもの)は、紛争処理の対象にはなりません。
民事上の紛争には、損害賠償の他に、操業時間の変更、原材料の変更、設備の取替、操業停止、工場移転などのあらゆる態様の請求に関する紛争が含まれます。
5.公害紛争処理制度の特長
- 申請に係る手数料が、裁判に比べて低く抑えられているほか、手続きの主要部分に係る費用を行政の負担としているので、当事者の経済的負担の軽減が図られています。
- 熊本県の公害紛争処理(調停)に係る期間は、平均約1年程度と迅速な解決が図られています。
- 訴訟に比べ手続きの形式的な厳格性が緩和されているので、紛争の実態に即した柔軟な進め方をすることができます。つまり、申請者の当初の主張に必ずしもとらわれることなく、意見聴取、実態調査等により当事者の真意や紛争の実態を入念に把握し、適正・妥当な解決を導きます。
6.調停、あっせん、仲裁とは
調停
調停は、最も多く利用されている制度です。
公害審査会委員の中から3名の委員が調停委員会を構成し、当事者の出頭を求めて、双方の主張内容を聴取しながら事実関係を明らかにし、公平で当事者の納得がいく解決策を探るものです。調停においては、調停委員会が主体となって話し合いを進めますが、当事者双方がお互いに譲り合って紛争の解決を図ることが必要になります。
申請には手数料がかかります。
あっせん
あっせんは、当事者が主体となって当事者自身の努力による自主的解決を期待する制度です。公害審査会委員の中から選ばれた3名以内のあっせん委員が当事者の話し合いを側面から援助しますが、当事者間における積極的な話し合いとお互いに譲り合って紛争を解決しようという意思が必要となります。
申請に手数料はかかりません。
仲裁
仲裁は、紛争当事者の双方が裁判所に訴える権利を放棄し、紛争解決を公害審査会委員の中から選ばれた3名の仲裁委員からなる仲裁委員会に委ね、その判断に従うことを約束することによって紛争を解決する制度です。仲裁の申請に基づいて仲裁判断がなされると、それは確定判決と同一の効力を持ちます。
申請には手数料がかかります。(調停よりも高額になります。)
7.調停の流れ
調停の流れについては調停手続きの流れ(PDFファイル:62KB)も参考にしてください。
- 調停を申請するときは、熊本県公害審査会あてに申請書を提出します。
- 申請書に不備、手数料の不足等がなければ、公害審査会が受理し手続きに入ります。
- 審査会は委員の中から、3名の調停委員を選出し調停委員会が発足します。
- 調停委員会は、被申請人(相手方)に申請書の写しを送付し、調停の手続きが開始されたことを伝えます。また、被申請人は審査会に意見書を提出(義務ではない)し、申請内容に対する反論をすることができます。
- 委員会は、第1回調停期日の開催を当事者(申請人、被申請人)に通知します。
- 当事者は調停期日に出席して被害の実態や防止対策等について話し合いを行います。(調停期日は法律の定めにより非公開で行われます。)
委員会は、当事者それぞれの主張を聴き、必要に応じて現地調査を行ったり、参考人等から意見を聴いたり、市町村役場に資料の提出を求めたりして、当事者間の話し合いが円滑に進むよう支援しながら合意点を探ります。 - 当事者が合意に達すると調停が成立します。
この場合、委員会は合意内容を記した調停書を作成し、これに当事者、各調停委員が署名押印します。
当事者は、調停書に記載された義務を自主的に果たします。 - 一方、これ以上話し合いを続けても合意に達する見込みがないと委員会が判断した場合は、調停は打ち切られます。
8.調停の効力
- 調停が成立した場合、その調停条項は、民事上の和解契約としての効力を有します。
つまり、民事判決とは異なり、直ちに民事執行法に基づく強制執行はできません。
また、公害審査会の制度には、仮処分的な手続きや調停成立後の不履行に対する制裁的制度もありません。
調停条項を強制的に実現しようとする場合は、民事訴訟等を提起し債務名義を得る必要があります。
9.手数料について
手数料は、調停又は仲裁を求める事項の価額により、熊本県手数料条例第2条第1項第551号別表21の定めるところにより算定します。
- 損害賠償を求める場合は、その請求額が「調停を求める事項の価額」及び「仲裁を求める事項の価額」となります。
- 価額を算定することができない場合(騒音の差し止め請求等)は、その価額を500万円とみなします。
調停を求める事項の価額 |
金額 (1件につき) |
---|---|
(1) 100万円まで |
1,000円 |
(2) 100万円を超え1,000万円まで |
その価額10,000円までごとに7円 |
(3) 1,000万円を超え1億円まで |
その価額10,000円までごとに6円 |
(4) 1億円以上 |
その価額10,000円までごとに5円 |
例えば…損害賠償額500万円の場合
{500万円―100万円}÷10,000×7円=2,800円・・・(2)
(1)+(2)=1,000円+2,800円=3,800円(手数料額)
損害賠償額1,200万円の場合
{1,200万円―1,000万円}÷10,000×6円=1,200円・・・(3)
{1,000万円―100万円}÷10,000×7円=6,300円・・・(2)
(3)+(2)+(1)=1,200円+6,300円+1,000円=8,500円(手数料額)
仲裁を求める事項の価額 |
金額 (1件につき) |
---|---|
(1) 100万円まで |
2,000円 |
(2) 100万円を超え1,000万円まで |
その価額10,000円までごとに20円 |
(3) 1,000万円を超え1億円まで |
その価額10,000円までごとに15円 |
(4) 1億円以上 |
その価額10,000円までごとに10円 |
例えば…損害賠償額500万円の場合
{500万円―100万円}÷10,000×20円=8,000円・・・(2)
(1)+(2)=2,000円+8,000円=10,000円(手数料額)
損害賠償額1,200万円の場合
{1,200万円―1,000万円}÷10,000×15円=3,000円・・・(3)
{1,000万円―100万円}÷10,000×20円=18,000円・・・(2)
(3)+(2)+(1)=3,000円+18,000円+2,000円=23,000円(手数料額)
熊本県公害紛争処理申請手数料の減免等に関する要項(PDFファイル:95KB)
10.調停等の申請にあたっての注意点
- 調停等の申請を検討されるときは、まず、県環境保全課にご連絡をお願いします。
担当者から制度の内容や、申請の方法などをわかりやすく説明します。 - 制度の内容を十分に理解されていないと、申請が「期待はずれ、時間、費用、労力のムダ」となってしまう場合がありますので、ご注意ください。
- 申請をされる場合は、申請書を熊本県公害審査会に提出します。申請用紙は県環境保全課で準備しています。
11.他の主な紛争解決手段について
熊本県公害審査会が行っている紛争処理以外に下記のような紛争解決手段があります。
- 地方裁判所または簡易裁判所に「民事訴訟」を提起する。
- 簡易裁判所に「少額訴訟」を提起する。
- 地方裁判所に「仮処分」を申請する。
- 簡易裁判所に「調停(民事調停)を申し立てる。
- 簡易裁判所において「起訴前の和解」(「即決和解」ともいいます。)により、裁判官の面前で相手方と話し合いで解決する。
※最高裁判所のホームページ<外部リンク>に解説があります。(裁判手続の案内→民事事件)
- 公害等調整委員会に「裁定(責任裁定・原因裁定)」を申請する。
[責任裁定]:損害賠償責任の有無をはっきりさせることを目的とする手続き。
[原因裁定]:被害の原因をはっきりさせることを目的とする手続き。
※詳しくは公害等調整委員会ホームページ<外部リンク>をご覧ください。
12.よくある質問
- よくある質問1【申請前の相談】 よくある質問1(PDFファイル:73KB)
- よくある質問2【申請時の相談】 よくある質問2(PDFファイル:57KB)
- よくある質問3【調停係属時の相談】 よくある質問3(PDFファイル:50KB)
- よくある質問4【その他】 よくある質問4(PDFファイル:45KB)