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グループホームみなみ阿蘇 古澤幸精さん(社会福祉士/介護支援専門員)
喜怒哀楽いろんな表情を見せてくださった時、利用者さんの家族の一員になったと感じます。
古澤さんが介護職に就こうと思ったきっかけは、子どもの頃の二つの体験からだそう。
「私には知的にハンディキャップがある叔父がいます。夏休みや正月などには、施設から私の家に泊まりに来て、よく遊んでもらっていました。大好きな叔父の身の回りのお世話をしながら、将来はこのような方々の役に立つ仕事をしたいと思ったのが一つ。もう一つは、ある時、身体に障がいがある方や車椅子に乗っている人を興味半分に眺めていたら、母から『あなたがそういう立場だったらどんな気持ちになると思う?もっと相手を思いやり、手を差し伸べられるような人になりなさい』と諭されたことがありました。自分の中につい作ってしまっていた、弱者の方との壁を取り払いたい、そんな思いから福祉の道を目指そうと思いました」
高校卒業と同時に介護福祉士、専門学校卒業時に社会福祉士の資格を取得。入職し、順調に介護職の階段を上っていた古澤さん。ある先輩との出会いが、その後の介護への考えを大きく変えます。
「例えば何時から何時までにおむつ交換を終わらせるとか、介護業務を時間内に確実に終わらせることがプロだと思っていました。そんな時、先輩が『それは違う。時間なんて気にしなくていいから、利用者さんのペースに合わせて介護をすることが一番大事なんだよ』と教えてくださったことがあり、それまでの自分が恥ずかしくなりました」
それ以来、ご利用者中心で仕事をするようになった古澤さん。介護職の醍醐味を尋ねると、意外な答えが返ってきました。
「私は、利用者さんの笑顔を引き出すだけがいい介護とは思いません。私にプイッと怒ったり、わんわん泣いたり、そんなありのままの表情を見せてくださる時にやりがいを感じます。だって私に心を許し、家族の一員だと思ってくださっているということですから」
今は主任として約20名のスタッフを率いる古澤さん。リーダーとして心がけていることは何でしょうか。
「みんな十人十色、考え方も人それぞれですが、色々な意見を引き出し、それを否定することなくまずはやってみることをモットーにしています。やってみて良かったこと、そうじゃなかったことを全員で共有して次に活かす。それが最終的には利用者さんのためになれば、こんなに嬉しいことはありません」
古澤さんは、話下手でもコミュニケーションを取るのが苦手な人でも介護職に向いていると言います。
「利用者さんにそっと寄り添うだけでもいいんです。その方にとってはそれだけでまるで自分の子どもや孫がそばにいるような安心感があります。私は誰もが介護職になれると思います」
阿蘇の大自然のようにおおらかな古澤さん。今日もご利用者さんとのあたたかな触れ合いを生み出しています。